ガス圧と成分進化
焙煎の乱れを空焚きメンテナンス(ドライバーン)で修正して安心していたのも束の間、夏のような気温と湿度の上昇によって火力の狂いが起こりはじめました。ガスを出す圧力だけで火力を調整しているため、高温多湿の日はどうしても同じガス圧だと火力が落ちるのです。温まったガス管内のガスの体積が増え密度が下がる、空気の密度も下がるので酸素質量流量も下がる、高い湿度の中で燃焼させなければならないので火力も落ちる、といった複数の原因が重なって起こるものと思われます。
これまでも何度か、火力とROR(温度上昇率、温度上昇速度)は別物であるということは認識してきたのですが、今回の乱れも後半の火力を上げるだけで解決したので、どんなに中盤の火力が強く後半の速度が保てていたとしても、後半の火力が足りていないと風味の暗さに繋がるということを再確認しました。
これは焙煎時の熱源の中で伝導熱の比率が高いと成分進化が遅れ気味になるということを示しているのだと思います。焙煎時の三つの熱源である対流熱、輻射熱、伝導熱のうち対流熱と輻射熱は豆の芯まで熱を通しやすい性質がありますが、伝導熱は表面から局所的に強く熱が伝わります。これは香ばしいロースト感や厚みのあるボディ感を作り出しますが、豆の風味特性を引き出し、成分を進化させる方向にはあまり強くありません。香ばしさがありながらも、渋みの乗った質感になりやすいのです。直火式焙煎にしても、熱風式焙煎にしても、メインとなるのは対流熱と輻射熱であり、半熱風式においてはこの伝導熱を制御することが求められます。焙煎の中盤までで蓄積された熱を頼って、後半の火力を弱めてしまうと、相対的に伝導熱が優位になります。
アイスコーヒーやミルクに合わせる時などはこの伝導熱の味が強みになることもあるので使い分け次第ですが、夏と冬で火力が明確にブレることにだけは留意していきたいと思います。
