焙煎機の冷却力

焙煎の最後の工程であり、最重要の項目でもある煎り止め。それに集中するあまり、焙煎が終了すると安心して、データを記録したり、次の焙煎の準備をしたりと、他の作業に移ってしまうものです。


しかしながら、焙煎機から出され、温度上昇が止まった豆もまだ反応が進んでおり、その冷却速度が風味に大きな影響を与えます。
もともと焙煎機の冷却装置というものが、煙突の高さなどからくる排気力を、レバーで空気の流れのルートを変えてそのまま利用し、吸い込んで熱を奪うというシンプルで優秀な構造であることと、装置が無くても常温で攪拌していればあとは放っておいてもそれなりの速度で冷めていくことなどから、あまり気に留めないところでもありました。


ところがある時、焙煎が終わった豆を袋に詰めて仕舞おうとした時にまだ温かさが残っているのを感じ、冷却レバーに変えるのを忘れていたことに気づいたのですが、その豆をカップテストしてみると、苦味と酸味が同時に強くなったような、ややネガティブな質感に。これには排気力が弱くなって出てくる風味と共通したものを感じました。焙煎途中の排気力の悪さが原因だとずっと思っていたのですが、まさかと思い、煎り止め直後の熱い豆に水を噴霧して気化熱で急冷するという荒技を試してみたところ、久しく出せていなかった軽く淡い質感に。冷却力が明確に不足していたようです。

焙煎機の排気力が弱まったらダンパーを全体的に開け気味にすればよく、最大排気の時だけハンデがある、という程度にしか考えていなかったのですが、冷却時にも同じ排気力を使って熱を吸い込み冷やす構造なので、排気力が弱ければ冷却力も弱くなる。これもまた盲点でした。

まだサンプル数が蓄積できていないので確証は持てませんが、焙煎度が深くそれでいて重い味にはしたくない個性の豆には、水で冷却するのは一つの手段としてアリなような気がしています。もちろん焙煎機、攪拌機の底が濡れたり冷めた豆が湿っているような過剰な水分量はNGです。