焙煎機の排出口の汚れ
定期的な焙煎機の大掃除、オーバーホールは、当たり前のように重要ですが、当たり前であるがゆえに軽く見られることがあります。というのも、問題となるのは汚れが溜まってきたら火災などの危険があることだからきちんと冷却するとか、あるいは排気が悪くなることだからダンパーを少し開けてみるとか、即座には味に影響を与えずしばらくは微調整でなんとかなると判断され、「近いうちに」とか「そろそろ」掃除しようかという扱いになりがちだからです。
しかし、汚れによって最も強く味に影響を与えるのは、排気の悪さに関わる管の部分ではありません。コーヒー豆は回転するドラム内部で熱を受けながら、排出口の壁に叩きつけられるようにして攪拌されながら焙煎されます。この時に排出口側の壁に細かな粉塵が付くのですが、これが焙煎後、意外と取れないものです。綺麗な状態から1回でも焙煎した後にこの面を手で触ると、指がかなり黒くなるほど汚れています。これが3ヶ月、半年、1年と堆積していくと、固まった粘土のようなタールがこびり付き、これが焙煎中、常時加熱されながら豆に触れ続けるので、当然出来上がった豆には燻んだ風味が付くことになります。
少しの量なら味の輪郭が太くなったようにも感じられてあまり問題になりませんが、あるところまでいくと明確にマイナスが大きくなります。この状態の焙煎機で焙煎されたコーヒーは、抽出直後の熱い時に籠ったような煙たい味になり、冷めてくるとマシになってくるという継時変化を辿るのが特徴で、何日もエイジングしても一向に良くはなりません。
厚く溜まってしまったタールは、ヤスリやノミで力一杯こすってどうにか落とせるほど頑固なもので、これが排出口からはうまく手が届かない箇所にあると、部品を解体せずに落とし切ることは難しくなります。溜まりきる前の粉塵の状態なら、手の先が届けば清掃することは可能なので、週に一回ぐらい排出口の裏面全部を軽く拭き取る習慣をつけておくと、次にオーバーホールが必要になるまでの期間がかなり長くなります。
ドラム内部の横側の曲面の部分はほとんど汚れが付かず長年使っていても清掃することはあまり無いのですが、それがかえってこの排出口の面のタール汚れに対する認識の甘さに繋がっていたようで、しばらく重めの味になってしまっていたようでした。メンテナンスに関しても、何年も試していかないと気づかない盲点があるようです。
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