トップオブトップの深煎り
カッピングで80台後半のスコアを出すようなトップレベルのコーヒーというのは浅煎りから中煎りで止められることがほとんどです。華やかなフレーバーや酸を損なわないように、というのが1番の理由だと思いますが、もう一つ、審査に公平さを期すために焙煎度を揃えて行ってきたという理由もあるでしょう。アグトロンやL値と呼ばれる色の指標で測られるのですが、中央値付近である50でも明らかに中煎りではなく浅煎りとしか思えない明るさをしていることが多いです。深煎りから浅煎りまで広く提供しているという店でも、実際には深煎りの商品が中煎り程度の焙煎度で、浅煎りは従来の浅煎り以上に浅い、シナモンローストの域にまできていることが多く、かつての世の中の焙煎度の認識と比べて全体としてかなり手前に寄ってきているということでしょう。本当に深煎りのコーヒーというとむしろ大手のコーヒースタンド、カフェで扱っているような豆に見られます。
焙煎度を揃えてカッピング評価をしてきたために、浅〜中煎りに向くことが多い軟質あるいは小粒豆が高い評価を受け、ケニアやマンデリンといった深煎りに耐えられる豆は相対的に低めの評価になってきた感じも否めません。浅煎り向きの豆が評価を得て主流になり、深煎り向きの豆が深煎りにされる機会を減らされ、真価を出し切れないまま勝負させられているといった印象です。
深煎り向きとされる豆でもやはりトップとなると深煎りによってフレーバーや個性が弱くなってしまうのが実際のところでは、という向きもあるようですが、そんなことはありません。ケニア等の深煎り向きのトップを深煎りにすると、苦味やボディ、香ばしさといった深煎りの特徴がそのままグレードアップされた風味が立ってきます。普通のスペシャルティではキャラメル感止まりだったコクが、変な例えですがコーラだとか栄養ドリンクのようなギラギラした感じの旨味をまとうようになってきます。これはどんなに質の高い豆であっても浅煎りでは見られるものではありません。
深煎り向きの豆ならば、深煎りにしても華やかさは落ちません。ハイグレードな豆を揃えているロースターの方も、是非とも深煎り、フレンチロースト以上のラインナップにも挑戦していただきたいと願うばかりです。