メイラード反応
ドライフェーズ(水抜き)、ディベロップメントフェーズ(成分進化、発達)と並んで重要な局面であるメイラードフェーズ。肉や味噌などの発色反応として有名ですが、コーヒーの焙煎となるといまいちよく分からなかったいうのが正直なところでした。
もちろん何も知らなかったというわけではありません。メイラードフェーズ(150〜160℃)で豆の褐色が濃くなることと、この色が強く出た場合は味が濃厚になるということは何度も経験していました。ただ、それが味の良し悪しにどう繋がるのかが捉えにくいのです。
濃厚な質感を引き出す反応であるならば、深煎りは長めにとり、浅煎りは早めに通り過ぎてしまう方が合うと思うところですが、実際はそう簡単にもいきません。キリッとしたキレのある苦味を減殺してしまう反応なので、長くとるとケニアのウォッシュトなどを深煎りにした場合、意外と個性が潰れたりもします。またハイチのように香ばしさと軽さを特徴とする豆の場合、メイラード反応を長くとると香ばしくて味が重い、短いと明るくて風味が薄いといったように一長一短の結果になってしまいます。ブルンジのナチュラルを深煎りにした場合、長いメイラードによってコクのあるフルーティな仕上がりになったと思ったら、エチオピアのナチュラルを深煎りにした場合だと長いメイラードによってフルーティーさが弱くなったりと、一筋縄にはいかない、というより法則性が見出せないように思えます。
結局のところ、個別に対応していくしかないというのが正解かもしれません。しかしながら、ぴったりとハマった場合は今までにない個性が顔を出すこともあり、時間をかけてデータを蓄積させていく価値がありそうです。焙煎で味を突き詰めていこうとするとどうしてもクリーンさが重要になってくるので、引き算、減点方式に落ち着いてしまうことが多いのですが、積極的な味の付与が期待できるという意味では、ルーティーンになりがちな日々の焙煎に新たな項目が久しぶりに加わったように感じます。