最大排気量

排気をどれだけ閉めるかということは味作りに大きく関わりますが、逆に排気をどれだけ開けられるか、どれだけ排気力が強いかということは、焙煎機のメンテナンス、準備段階においては閉めること以上に重要になってきます。焙煎時間の大半は排気を絞りつつ水分を抜いていくことになるのですが、前半と終盤のある2点においてダンパーを全開にして排気をできるだけ大きくするフェイズがあります。

豆を投入してから数分後、水分の抜けが始まるあたりで1分間ほどダンパーを全開にします。チャフ飛ばしとも呼ばれていますが、それがシルバースキンのことなのか表面に付着した粉塵のことなのかよく分からず、この呼称はあまりしっくりきません。しかしこれをやるかやらないかで味が大きく変わるのも確かです。風速の変化はどの局面でも味に影響しますから、この全開の手順は理論はともかく経験則で必要だと感じます。

焙煎機の準備段階において閉まるより開くことの方が重要というのは、天候や配管の影響などで排気力が落ちている場合、水分抜きの場面ではダンパーを少し開け気味にして調整が出来る一方で、最大排気量の低下はそれを補う術が無いからです。焙煎でダンパーを全閉にすることはまずありませんが、全開の場合はそれ以上の排気力が欲しくなることがあります。閉より開の方が上限の制約にぶつかるのです。

また終盤においても、フルロースト(大量焙煎)を深煎りで行うとなると、全開にしても煙かぶりの味になってしまうこともあります。ダンパーによって途中で自在に排気を変化させられるにも関わらず、煙突を高くしたり、排気量を上げるブロアーという装置を付けたりと、事前に排気力に工夫が必要なのは、最大排気量に余裕を持たせたいからなのです。

以前、焙煎の前半にその場を離れてうっかりダンパー全開のまま2〜3分ほど放置してしまったことがあり、それをテストしてみると意外や丁度良い具合のクリアーさに。長すぎると味の平板さ、渋みに繋がるので程度の問題ではありますが、最大排気量が物足りない時は全開の時間を少し伸ばすのも手かもしれません。