気温とガス圧

湿度によって必要な火力が変化するという考察をしましたが、それを差し引いても夏場はカロリー不足になりやすい。涼しい季節に雨が降ったからといってここまで火力が変化するとも思えません。

火力と睨めっこしているうちに気づいたのがガス「圧」という言葉。計測している機器も微圧計という名です。いつも火力と呼んでいるものは、ガスによって引き起こされた火の勢いや熱量を計っているわけではなく、ガスの圧力だけで調整しています。

夏と圧力ですぐに思い浮かぶのがボイル・シャルルの法則で、気体の圧力が低いと体積が増える、また温度が高いと体積が増える、というもの。体積が上がっても、ガスの量自体は変化しませんから、温度が高い場合に同じ体積で計ると「薄い」ガスとなり燃焼力が下がります。

夏に気温が上がれば、建物の外からくる配管の中のガスの体積は膨張し、それを手元で同じ圧力で出してあげると、薄いガスが出てくるというわけです。

実際に、冬と比べて夏の気温では同じカロリーを供給するためにはガス圧が20%以上も多く必要であるというデータもあり、これに湿度が加わると、もはや誤差や味のブレどころではなく、高火力焙煎と低火力焙煎の違いと同じぐらいの差が出ます。

予熱、蓄熱を高めにとり伝導熱を多く利用する焙煎なら、これらの影響を半減させられますが、火力がメインの熱風式寄りの焙煎にすると気温による変化を受けやすいです。夏場の焙煎の乱れは浅煎りのほうがより感じやすいのではないでしょうか。