ブラジルゲイシャ
価格面で手が届くピンクブルボンやシドラがネクストゲイシャなどと呼ばれていますが、ゲイシャでも扱いやすいものが増えています。依然としてパナマゲイシャが突出して値が張りますが、それ以外の国のものであれば高価格帯という枠組みにはなりますが、冗談みたいな値段にはあまりなりません。
コロンビアゲイシャをしばらく使用していましたが、最近ではブラジルやペルー 、ボリビアといった南米のゲイシャも特徴的だと感じています。
コロンビアやコスタリカのように豆が硬く酸が豊かな豆は、ゲイシャ種でも冴えたフルーティーな個性が前面に出てきますが、南米のゲイシャはそこが少し抑えられており、ナッティさやしっとりした質感に寄るので、ゲイシャが持つもう一つの特徴である紅茶感の方が目立ってきます。
ボリビアやペルーも高地産のしっかりした豆なのに、ピンとした明るい風味を持つ中米産とは違って、ブラジルのような落ち着きがあるのが面白いところです。コロンビアゲイシャが酸のきついオレンジの印象なら、ブラジルやペルーのゲイシャは黒みがかったストロベリーに近いニュアンスでしょうか。
優しさと濃厚さを兼ね備えたゲイシャですが、焙煎に関してはけっこうシビアです。紅茶感はある程度強く火を入れないと開いてこないのですが、強過ぎると焦げに近い味がすぐに付いて酸が潰れやすいようです。どっしりとしたボディと繊細さがどちらも求められるので、真ん中を通す正確さが求められます。
しかしそれとは別に、なんといってもこれを曲者たらしめているものは、驚くほどのエイジングの遅さです。
ブラジルのゲイシャですが、焙煎直後にコクと風味が弱かったので、数日置いてテストしたところそれでも変化がない。3日、4日、5日と待っても、ちょっと華やかな普通のブラジルといった程度の印象で、ブラジルだとこんなものなのだろうと諦めかけていたところ、なんと9日目になって急に甘みと香りが出てきました。9日目あたりではなく、9日目で急にです。8日目は薄い味でした。冬場の保管なので進みにくかったことを考慮しても、この遅さには悩まされます。味の特徴も焙煎の出来も、このスパンに耐えながらの検証だったので大変でした。
とはいっても、特徴を把握してしまえば付き合いにくい豆ではありません。ティーライク、紅茶のようなコーヒーとは何かを知りたいという方には、南米ゲイシャはおすすめです。