火力とダンパーの関係

焙煎においては火力と排気が重要な構成要素であり、この二つを組み合わせて理想の味を目指します。ところが、この組み合わせということに関して以前から一つ謎がありました。火力に関しては、予熱や釜全体の蓄熱、豆の水分の抜け具合などに応じて、結果が変化するのですが、排気の強さに関しては、常に結果が固定される、ということが起こります。つまり、予熱が低い場合や豆が硬い場合などは10の火力が有効でも、予熱が高い場合は10は強すぎて味が変化してしまうのに対し、排気を絞るためのダンパーは開け方を5に設定した場合、火力や予熱がどう変化しても5の味が必ず現れるということです。どんな条件であっても、ダンパー設定は4なら4、3なら3の特徴がブレずに再現されます。

これは従来のイメージからすると奇妙な話で、火力を変えながら吹き出し口に手を当てれば分かりますが、火力が強くなれば焙煎機内の圧力が高まるのは確かなのです。ダンパーによる味の変化の原因が豆にかかる圧力ではないのであれば、豆から蒸発した水分が籠るいわゆる蒸し状態の程度が原因なのかとも思いましたが、水分の蒸発がみられない100℃以前の時間帯のみダンパーを強く閉めたところ、それ以降の温度で閉めた場合と同じ傾向の味に変化したのでやはりこれも違います。

火力の上昇によって圧力も強くなる、そしてダンパーの開閉によって圧力も変化する、それでいてダンパーは火力に影響されないということは、何か相殺するような力が働いているはずで、一旦考え方を整理してみました。

まず、5の圧力を生み出す火力を4の締め具合のダンパーで抑えた場合、4が通り抜けて1が焙煎機内に戻ってきます。すると機内の数値は5−1=4となります。この機内の数値というのは漠然とした仮定の何かです。火力5でダンパー3なら、2が弾かれて戻ってくるので機内は5−2で3となります。火力が7なら、ダンパー5にすれば5が通り抜けて2が戻り、機内は7−2で5となります。7を3で締めれば3の分だけが通り抜け4が返り、7−4で機内3となります。どの場合においても、機内の数値はダンパーの閉めた数値と一致します。

この機内の数値とは何かと言えば、もう「熱風が通り抜ける速度」、風速としか考えられません。豆の表面を撫でていく熱風の速度、これは火力によらず、ダンパーの閉め具合と完全に連動します。これがダンパーによって生み出されるボディの違いを生んでいると考えられます。

考察を見直してみると大して難しいことを言っていないのですが、気づきにくいことでした。

正確な観測ではないので断言はできませんが、この仮説によってまた焙煎がやりやすくなると思います。