豆の挽き方と湿度
春から夏にかけて味が狂う原因がまた一つ分かりかけています。2ヶ月ほど前に作製したドリップバッグをつい先日、カップテストしてみたのですが、その明るい風味に驚きました。梅雨の時期に焙煎したにもかかわらず、淡い質感とクッキリした輪郭が保たれていて、ここ最近の出来とだいぶ違うのはどうもおかしい。今の時期でもクリーンさと風味の豊かさは申し分無いので、深く悩んでいたわけではないのですが、味のトーンというか、フレッシュ感が少し暗い。比較しないと分からないぐらいなので、妥協はあったのかもしれません。
何が違うんだろうと抽出中のドリップバッグをのぞき込んでみると、粉が実にきめ細やかで粒度が均質。比較に使ったドリップバッグは焙煎した豆を工場にお願いして挽き、充填してもらっているタイプのもので、窒素充填による劣化の遅さは、2ヶ月間粉の状態であっても変化はほぼ無しといえるほど。
焙煎士の本分は焙煎であり、良質の焙煎豆をお届けできれば後のことはあまり口うるさく言うまいと考えて抽出のことに関しては他の人にお任せするような姿勢になっていましたが、自身がチェックする豆の状態が正確に判別できないとなると話は別です。悪い豆を良いと言ってしまうのと同じぐらい、良い豆を悪く言ってしまうのは混乱の元になります。
暗い風味の原因の多くが豆の挽き方、グラインドの質にあることが分かりましたが、それが季節によって変化するのか?という疑問に答えてくれたのが抽出のプロであるバリスタでした。珈琲豆は湿気を非常に吸いやすく、それによって挽きが粗くなるとのこと。正確に言うと不均一になりやすく、微粉が多くなるようです。これを回避するために、焙煎豆を冷凍庫で凍らせて衝撃に脆くさせ、細やかな粉砕を可能にするテクニックがあり、これを試してみたところてきめんに先述のドリップバッグと同じ味になりました。もともとミルは平均的な性能のものを使用しているのですが、それが夏場だと短所が少し前に出てきてしまっていたようです。