失敗した原因の特定
焙煎士の天敵、季節の変わり目が今年もやってきました。
昨年の9月、湿度90%の台風の時期に水分抜きのスキルアップに成功して以来、少々慢心があったのか、先日の焙煎で少しだけ怪しい仕上がりになってしまいました。芯残りとまではいきませんが、冷めた時にやや重さが残り、酸味ではなく渋味寄りの質感に。水分残りが原因だったのですが、これを深煎りのコーヒーで瞬時に気付けたのは二年前と比べて進歩だったと思います。それ以前ならオーバーローストの苦味なのか、煙をかぶった味なのか、煎り止めが浅すぎたのか、または複合的なものなのかと原因の特定に苦戦して、あれこれとこねてしまったところです。焙煎のプロファイル、データを眺めて、「ここがいつもと違うからこういう味になったのかもしれない」という分析をしていたところから始まって「こういう味がするからここに原因があるはずだ」と味で原因の箇所をある程度言い当てることができるようになりました。矢印が逆になったということです。
序盤の豆が硬い時間に排気を閉めすぎた味は舌の奥の脇に残る苦味、豆が柔らかい時間に排気を開けすぎた味は舌の中央で浮き上がってくるような生っぽい渋味、このタイミングで火力が足りなかった場合はどうこう、といったように、味を見ただけで原因の箇所が分かるようになると、ミスが一回で終わるようになります。
これが分からないと、試しにこの箇所を変えてみようかとか、焙煎して数日経てば良くなるんじゃないかと保留にしてみたり、その間にも他の焙煎をしなければならなくなったり、トライの回数が増えてしまいます。そこで焦って一度に複数の箇所を変えると、もう原因が特定できなくなります。
こうして検出できた水分抜き不足ですが、なぜ以前から春先が最も失敗の頻度が高いのか、確証を掴みかねているところでもあります。前半の水分抜きを徹底すれば解消したことから、排気や後半の成分進化が決定要因ではないことは分かりました。湿度が原因なら夏の方が失敗しそうなものですが、夏でも晴天であればそう大きくは崩れません。日ごとの温度差、日中の温度差は春の方が大きいので、生豆についた結露が原因ではないかと踏んでいますが、とりあえず解決方法は見つかったので分析はまた今度にしようと思います。