ミディアムロースト

焙煎度は大まかに浅煎り、中煎り、深煎りの三つに分けられますが、アメリカ方式でもう少し細分化するとライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティ、フルシティ、フレンチ、イタリアンの八つに分けられます。

大手エスプレッソバーなどでは油脂をまとった漆黒の豆が誰にでも見えるようにミルの中に入って置いてありますが、あれがイタリアンか、それ以上の焙煎度です。もう少し黒みを抑えた味に厚みのある深煎りだとフレンチ、ブラックでも飲みやすい中深煎りのフルシティ、酸味が苦味と釣り合ってくるシティ、といったように浅くなっていき、飲料として最も浅い下限がミディアムと言われています。

浅ければ浅いほど酸味が強くなるというイメージから、さらに浅いシナモン、ライトならもっとキツい目が醒めるような酸を楽しめるのかというと、そうでもありません。

焙煎中、様々な種類の酸が深煎りに近づくほど減少していきますが、これらは焙煎を開始した直後から減っていくわけではなく、途中から現れて増加しピークを境に減少するという山なりのグラフを描くものがほとんどです。時間に比例して減っていくのは最近有名になったクロロゲン酸ぐらいでしょうか。コーヒーらしい酸味がもっとも出てくるのがミディアムからということです。

このミディアムよりも浅いシナモン、ライトの豆がどのような味になるかというと、「木の味」です。あるいは麦茶やゴボウ茶を飲んでいるような感覚で、キュッと効いてくる酸味がありません。酸味が魅力の浅煎りコーヒーが流行って久しいですが、フルーティーで爽やかな浅煎りを創り続けるお店は、無闇に早く煎り止めることはせず、この酸味が出る一点を知っているのです。

様々な酸が複合的なタイミングで増減します。焙煎が迷宮と言われる理由の一つです。