improve(インプルーブ)

コーヒーの味を審査するカッピングにおいては、酸の質や後味の印象度、カップのきれいさなど8項目(sca方式では10項目ほど)にそれぞれ点数をつけ、合計で80点以上ならスペシャルティです、といったように数字で評価されますが、それぞれの項目においてさらに具体的に説明をするメモ欄のようなところがあり、カッパーの方々は各々感じたことを記していきます。アフターテイストは甘いけれど持続しない、酸の質はきれいだが弱い、フレーバーはベリー系ではなくシトラス系だ、といった具合です。

そういったたくさんの所感や評価の言葉の一つに、improve(インプルーブ、向上)というものがあります。時間が経過して、あるいは冷めて、より良くなったという意味で使われます。

普段飲みのコモディティコーヒーでは、冷めたときにどれだけ味が落ちるかというネガティブ評価の方がメインだったと思います。芯まで火が通った適切な焙煎がなされている豆であればこのネガティブが少なく、抽出後に一晩置いてもブラックですいっと飲めてしまいます。

ところがトップスペシャルティ以上の生豆になってくると、時間経過によるネガティブが少ないどころか、むしろ良くなっていくという現象が起こります。これは上手な焙煎で作り出せるもの以上の力で、生豆の質に依存する部分が多いとされています。

スペシャルティ水準の豆や丁寧に焙煎された豆に慣れた人にとっては、抽出直後の熱々のコーヒーよりも少しぬるくなった方が味が分かりやすくて良い、というのは昔からよく言われたもので当然のように感じますが、カップオブエクセレンスで入賞するようなトップクラスを正確に煎り止めた豆をカップテストしてみた時に、時間が経てば経つほどフレーバーが強くなるという状況に出くわしました。時間が経つと酸や甘さが重厚に感じやすくなるということは経験があるのですが、抽出した後に一時間経って冷めたコーヒーよりも、三時間経ったコーヒーの方がフルーツ系のフレーバーが発達していたのです。これは初めての経験でした。モノがいいほど時間で向上していくというのは、冷たいから分かりやすくなるということではなく、本当に上昇していくものなのだと改めて確認できました