ドミニカ ワイニー

エチオピアのイルガチェフェ地区やグァテマラのウェウェテナンゴ地区など、スペシャルティコーヒーの流れにいち早く乗り、その名を世界に広めた時代の申し子のような農園や地区はいくつもありますが、銘柄一つでブランドを確立したこのドミニカのワイニーもなかなか異色といえます。

ハイチやジャマイカなど、スペシャルティの世界にあまり深く入っていかなかった生産国がいくつかあり、ドミニカもその一つになるような気配がありました。そのイメージを2007年にドミニカのコーヒー協会の品評会で入賞したワイニーナチュラルが覆します。

この豆の特徴はなんといってもストレートなナチュラルフレーバー。ナチュラルは様々な果実の風味が組み合わされていて表現に困ることも多いのですが、これは「赤ワイン」の一言で済んでしまう分かりやすさがあります。少しダークチョコレートのような優しい苦味も伴いますが、狙った味を出すのに苦労することはありません。

この豆のもう一つの特徴は、カリブ海系のナッツ感、軽さを失っていないことです。派手で華やかな果実風味は高地産の豆や硬質豆に強く出ることが多く、それらは重厚な酸やボディを伴うのですが、これにはそれらが無く、ハイチやキューバのような滑らかさ、軽やかさがあります。いわゆる飲み疲れがあまり起こらないパリっとした爽やかさで、強烈なフレーバーと軽い味という個性はかえって珍しいです。

焙煎度は浅煎りが適正で、中煎りに少しでも入れると平板な味になってしまいます。他のカリブ海系と同じく、焙煎のどの工程でも黒ジワに覆われることがなく、粒も大きい。深煎りのペルーと同じような豆の綺麗さで、変化が乏しく、のんびり見ているとあっという間に色付いてしまいます。狙った風味を出すのは難しくないのですが、明瞭な酸が消失するタイミングが少し早く、かなり思い切った浅煎りを意識した方が上手くいきます。