ダンパーの閉め過ぎについて
渋み抜きや味の滑らかさ、テクスチャ(輪郭、ボディ)を強くする目的のために、前半にダンパーを閉じぎみにして豆に圧力をかけて進める焙煎をしていますが、季節や気温などの外的要因だけではなく、豆や焙煎の特性に応じて最適なダンパーの開度、圧力も少し変わります。少し、というのはダンパーを開度が僅かに変化するだけで味が大きくブレるという怖さ、繊細さがあるからです。
ガス圧(火力)の場合、温度やタイミングによっては強火や弱火の冒険が許されることもありますが、ダンパーの「閉め過ぎ」に関しては、たとえ低い予熱、低い火力における最序盤の2、3分間であっても決定的なアフターテイスト、後味の悪さに繋がってしまいます。生豆がまだ熱くもない状態で数分間だけ強い圧力をかけただけでそうなるのは不思議ですが、この場合の味はファーストタッチではまろやかで雑味が無いように感じられるのが特徴です。しばらくしていつまでも苦味が残るようなくどさが出て、また口に含むとコクと旨味が感じられ、飲み込んだ後にまたくどさが残る、という二面性を抱えるので評価がしづらいです。
こうした閉じ過ぎによるアフターの悪さは、出てくるのが焙煎後の3日目あたりからという時間差があるところも困りものです。焙煎直後にカップテストをして印象が良かったのでブレンドに入れてしまって、数日後に違和感があっても何が原因か分かりづらくなります。こういう経時変化に弱い豆を作るというミスをしてしまうと、豆の種類を多く揃えている場合には混乱してしまうので厄介です。
生豆と焙煎方法と開度の関係としては、粒が大きく硬い豆ほど、また予熱を低くとっているほど、ダンパーの閉まり過ぎには弱くなる、という傾向があるようです。コロンビアのような硬い豆を低めの予熱で投入して軽めに仕上げようとした場合、いつも通りの開度だと少し芯が焦げたような出来になり、コロンビアの華やかさが損なわれやすくなります。逆にブラジルのような柔らかめの豆を予熱高めで苦めに仕上げようとするなら、強めに閉めても悪いアフターは出ずクリーンで重みのあるコクが楽しめます。