生豆の水洗

焙煎後の豆にシルバースキン(薄皮、チャフ)が残ってしまうことが多くなりました。酸味が強いかなり浅煎りの豆もラインナップに加えようと思い、シナモンロースト〜ミディアムローストあたりの焙煎度で煎り止めるのですがこの浅さだと白い皮が飛び切らずまだらな仕上がりになってしまいがちです。

浅煎りであってもダンパーを使い豆に圧力をかける焙煎を行っていますので、どうしても豆のチャフの排出力は落ちてしまいます。圧力をやや弱め、煎り止めをもう少し遅らせれば完全に飛ばせるという微妙な境目なので、味が大きく落ちるほどの量が残るわけではありませんが、妥協の無い芯まで火が通った極浅煎りに一度挑戦したくなり、焙煎前に生豆の水洗いを試してみました。

水に浸すと、いくつか浮かんでくる豆があります。スペシャルティとはいえ重さが完全に揃っているわけではないことが分かります。

50℃程度の湯でそのまま手で揉み洗いすると、みるみるうちに黒く濁っていきます。明らかに薄皮、シルバースキンだけではありません。微粉ともいえるような表皮の汚れを数回水を取り替えて洗い落としていきます。

簡単に水を切り、表面が乾いたところで焙煎釜に投入したのですが、釜の予熱を一気に使い切って通常よりもはるかに低い温度からのスタートとなり、その後の上昇速度も遅い。例え豆の表面が乾いていても、水は豆の内部まで浸透していて、水の比熱により非常に温度が上がりにくくなってしまっているようです。

常温では何日経っても内部の水は抜けず、待っていたら衛生面の問題もあるので、焙煎機で焙煎が進まない60℃程度の温度でしばらく撹拌してあげることにより乾燥させることが出来ました。

乾いてさえいれば焙煎は普通に進みます。できた豆をカップテストしてみると、華やかな風味が少し弱くなり、ボディも軽くなった分、明るい酸が際立つようになりました。例えるならレモンのような、良く言えば爽やか、悪く言えば単調な風味になったといえます。どちらかといえばあまり重厚ではない風味の豆を飲みやすく仕上げるのに向いた方法だと思います。

ハンドピックによる豆の選別以外で生豆に手を加える作業は初めてですが、コーヒー豆生産者の仕事の一部を少しだけ真似できたような気がします。