SCAJ2021
SCAJ2021のカンファレンス、エキシビジョンに行ってきました。
去年はコロナの影響で開催が出来なかったので二年ぶりとなります。例年よりも規模は縮小され、来場者も海外の関係者も人数は減っているようでした。
しかし展示されているコーヒー豆は数年前と比べてもまた様変わりしており、アナエロビック(嫌気性発酵)の文字が当たり前のように並び、ブラジルやペルーのカップオブエクセレンスが主役、コロンビアのナチュラルや発酵を複数回行う生産処理の豆など、これでもかというほどのフレーバーの強度を競うかのようなコーヒーが目白押しで、それをどこでも試飲でき、かつてゲイシャ種が独占していた地位が他の豆に取って代わられているような印象すら受けました。
マンデリンやペルーであっても、フルーティな風味を最大限に引き出すために、ほぼ飲める範囲ギリギリの浅煎り、ミディアムローストのような焙煎度で統一されており、ロースターの身としては生豆の質の向上を喜ぶと共に一種の違和感、危惧のようなものも覚えていました。
そうした意識を持っているのが自分だけではないことを確認できたのが、当初からのお目当て、イベント会場で行われるローストマスターズチームチャレンジの内容でした。
今年のテーマは初の「深煎り」
スペシャルティの世界において浅煎りがメインになって久しいことに対し、トップカッパーの方々も含むところがある、とはいかないまでも、やはり深と浅は両輪であるべきとは強く感じておられたようで、毎日飲みたくなる深煎りというお題での今回のチームチャレンジ。
深めの焙煎に耐えられる高地産のコロンビアトップスペシャルティを9チームがそれぞれ焙煎し、それらの比較、評価をプロのカッパーと集まったオーディエンスがそれぞれ行います。
一口飲んでみての感想は「ん、これは中煎りなのではないかな」
確かに強い酸味は抑えられているし香りも香ばしいのですが、いわゆる深煎りと呼べる焙煎度に達しているコーヒーは1つもありませんでした。そもそもコロンビアは総じて煎り止めのストライクゾーンが狭く、深煎りというよりは中深煎り向きの豆であり、全チームが深煎りよりも中煎り付近に落ち着いたのは自然なことなのですが、それでもやはり浅いという印象が強めでした。データとしては2ハゼに入っているようですが、焙煎時間が10分前後とかなり短いため、実際のハゼの反応や色合いよりも酸が強く出る傾向にあるはずです。
深煎りであっても綺麗な酸は残したい、苦いだけの深煎りは避けたい、というのはどのチームにも共通していたコメントで、全くそのとおりだとは思うのですが、そのラインがかなり手前に来ているという印象は拭えませんでした。
課題の豆がケニアやブルンジだったら、違った傾向になったと思います。深煎りのテーマとコロンビアの取り合わせは実は微妙に噛み合っておらず、典型的なおいしい深煎りを記憶しているロースターの方ほど悩まれたのではないでしょうか。
フルーティやティーライクの浅煎りの鮮烈さと、チョコレートやキャラメルの深煎りの強い旨味。やや出遅れていた深煎りのスペシャルティが浅煎りに追いつけば、ややもすると一般のお客様を置いてけぼりにしがちだったスペシャルティの間口を大きく拡げることができるように感じられてなりません。