嫌気性発酵のコーヒー

コーヒーの精製方法には大きく分けてナチュラルとウォッシュドがあり、その中間と言えるパルプドナチュラル(ハニー製法)が比較的新しい方法として加わり、この三つがメインになっていましたが、ここ数年で嫌気性発酵(アナエロビックファーメンテーション)という手法が台頭してきました。コーヒーチェリーを酸素が遮断された密閉容器内で発酵させるというもので、酸素を使わない微生物の働きを利用したものです。

C6H12O6 + 6O2 + 6H2O → 6CO2 + 12H2O

化学の教科書などで見たことがあるような無いような有名な好気呼吸の式です。C6H12O6 が糖で、酸素O2があると二酸化炭素CO2と水H2Oが出来ます。細かいところは省略してありますが→の右に行くとエネルギーが生まれて生命活動の源となります。

これが酸素が無い条件下だと、嫌気性微生物の働きにより

C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2 

C6H12O→ 2C3H6O3

これらの反応が起こります。C2H5OHというのがアルコール(エタノール)でありC3H6O3が乳酸です。

実際にコーヒーのフレーバーを表現するのにラクティク(乳酸のような)という言葉もあり、ヨーグルトや日本酒の風味にも関係しています。それらの風味を狙って強く出すことを目的とした方法でしょう。

   

10月に入ってからこのアナエロビックのナチュラル製法のエチオピアを入荷したのですが、確かに明瞭なアルコールの風味があり、エチオピアは深煎りと浅煎りの両方に耐えられるということもありこの強い個性を打ち出すのに焙煎度で悩みました。カッパーの方もくどさの出ない浅めをおすすめしてくれたのですが、やはり浅煎りは別の銘柄の直球のフルーティ路線で行きたいと思い、このウイスキーのような赤黒い風味を差別化する意味でも深煎りを選択しました。

精製方法というのは工程のどのタイミングで乾燥をさせるか、ということで分類されるのですが、まさか発酵まで入り込んでくるとは思いもしませんでした。土地の個性であるテロワールだけでなく生産者の技術にも個性が出る、焙煎士としても実に面白い時代になったと思います。