デカフェの焙煎

デカフェ、カフェインレスのコーヒーを目にすることは珍しくはなくなりましたが、その生産や製造の工程を不思議がる方は多くいらっしゃいます。有機溶媒を使用した抽出方法やウォータープロセスと呼ばれる水による抽出法などいくつかの手段がありますが、どれも生豆の状態で行います。生豆を上手に焼いてカフェインを抜くということは出来ないので、すでにカフェインが抜かれた豆をどれだけ美味しく焙煎するかが焙煎士の仕事ということになります。

スマトラ式のマンデリンやモンスーン製法のインドなど一目で分かるような生豆はいくつかありますが、見た目の個性ではデカフェの右に出るものはいないでしょう。鉱物かなにかに見えるほど枯れた色で、どう焙煎したらいいものか初めてでは全く判断がつきません。

ブラジルのスタンダードなスペシャルティを使用しているということで、シティローストあたりに目星をつけて

煎り止めようとしましたが、色の付き方とハゼのタイミングがかなりズレます。2ハゼに入った瞬間に止めたにもかかわらず、フレンチローストに近い焙煎度になってしまいました。通常の豆と比べてかなり火が入りやすいようです。

カップテストしてみると、風味を維持したまま非常に軽いボディに仕上がっており滑らか。重厚なチョコレートのようなスペシャルティに慣れてしまった舌には、一昔前のプレミアムコーヒーのようなお茶っぽさ、素朴さを思い出させるものでした。コクの弱さがかえって香ばしさを引き立てているような面もあり、スペシャルティにあらねばコーヒーにあらずというような方向に行ってしまいがちな考えを思いとどまらせるような優しさ、飲みやすさがありました。