半熱風式焙煎と予熱 (2)

半熱風式の焙煎機においては釜を十分に温めておいてある程度内部の温度を高めた状態で豆を投入するのが普通ですが、予熱をゼロでスタートする焙煎方法だと強火であっても弱火であっても「直火」に近い味になります。これは強火だと釜の金属熱が高まると同時に内部の熱風温度も高まり、弱火だと金属熱が上がりにくくても内部の熱風温度も上がりにくいので、どの火力で進めても豆が熱風と金属、二つからもらう熱の割合は同じぐらいになるためです。

ところが釜に大きな予熱が蓄えられていると、火が弱くても内部の温度は高い状態を維持するので熱風の成分が多くなります。

これらの予熱のほかにも焙煎機が持つ「蓄熱性」も考慮しなければなりません。

釜内部の予熱は、焙煎前半こそ火力(金属熱)を超える勢いで豆を加熱していくものの、しだいに蓄えが尽き、後半には火力と内部熱が拮抗する半熱風の状態に戻っていきます。この時、焙煎機の内部の予熱だけではなく、釜の外壁部分も含めた釜全体に蓄えられた熱が内部の温度低下を抑え、熱風焙煎寄りの状態を長く維持しようとします。釜の作りが厚く、蓄熱性が高い焙煎機は弱火であっても焙煎の後半まで早く進めることができます。

浅煎り向きの豆は直火の特徴であるコクや味の厚み、シャープな苦味をあまり求めませんから熱風系の焙煎の方が向いている場合が多く、釜の構造が大きくて蓄熱性の高い海外の焙煎機などは浅煎りメインのロースターには好まれる傾向にあるようです。

店頭などに置いてある焙煎機を見る機会があれば、直火か熱風か、日本産の焙煎機か海外のごつい躯体の焙煎機かを見分けて、味を予想してみるのも面白いかもしれません。