パナマの焙煎

今回ご紹介するのはスペシャルティコーヒーの火付け役であり、ゲイシャフィーバーを巻き起こし、スペシャルティコーヒーの世界三大農園の一つとも言われるエスメラルダ農園のパナマです。生産性が低く価格が高いゲイシャ種だけではなく、ティピカやブルボンといった堅実な品種の生産においても優れており、今回はスタンダードなスペシャルティであるダイアモンドマウンテンを焙煎しました。

テスト焙煎では焙煎前半からレモンや梨のような淡い果実の香りが感じられ、水分の抜けもよく色の変化も分かりやすく煎り止めがやりやすいという印象。しかしいざカップテストをしてみると、かつてのパナマのイメージにあったやんちゃな酸味が弱く、透明感やクリーンさが際立ったキャラクターになっていました。

これはスペシャルティコーヒーでたびたびある現象で、味の複雑さや厚みは昔よりも増しているのに酸味が飛びやすく、煎り止めの判断の遅さ(オーバーロースト)や長時間の焙煎に弱い豆が多くなっているのです。そして時間を短くしようと急ぐにしてもパナマのように柔らかめで浅煎り向きの豆にはスモークフレーバーが付くような強火はあまり当てたくありません。

そこで釜の予熱を時間をかけて高めにとり、「弱火で早めに」あげるという方法に切り替え、軽さと風味を併せ持つ浅煎りに仕上げました。やはり昔のようなツンとくる酸味にこそなりませんがスペシャルティらしい重層感と雑味の無さは引き出せたかと思います。

パワー勝負ができず、味作りの複雑さが求められるやりがいのある時代になったと思うことにしています。