季節の変わり目の焙煎 2

コーヒーの味の構成要素には、苦味や甘味、酸味といったテイストと、風味、香気といったフレーバーが代表的ですが、もう一つ重要な項目にテクスチャがあります。食感、舌触りのことで、近年ではマウスフィールなどとも。

コーヒーのテクスチャを表現する際に良く使われるのが「乳製品のような」粘性です。これが程よく豊かだとコクがあると言われ、必要以上に多いと重たいコーヒーとなります。程よく削られていれば軽いコーヒー、少なすぎると水っぽいコーヒーとなります。

そしてこの粘性を生み出すのが、焙煎中の排気スピードです。

焙煎の後半は煙がたくさん出ますので排気は基本的にダンパーを開けて強くするのですが、前半の準備段階、豆の水分抜きの工程においてダンパーをどれだけ閉めて排気を制御するかがテクスチャを決めます。閉めていればコクは強く、開けるほど弱くなります。

春先の焙煎がどう狂うかと言えば、味が出ないというよりも味が重くなってしまう症状が多いと思います。気温が上がり排気が弱くなってきた時にそれまでの冬用の設定では排気スピードが足りず、後半の排気も足りずに煙を被って燻り臭いコーヒーになります。

最新型の焙煎機にはこのような外気による影響を避けるために二重のダンパーが設置されているものもあり、成分の多いスペシャルティコーヒーを焙煎する環境は整ってはきていますが、このような失敗による原因の把握はよりよい味作りへの足掛かりとして非常に重要だと思います。