マンデリンの焙煎
一昔前の日本のコーヒー通の定番といえば、ブルマン、ハワイ、モカ、そしてマンデリンでしょう。
この中でブルマンとハワイは価格が突出して高い上に味のタイプとしてはバランス型、強い個性よりは洗練された香りと甘味が持ち味であり、意を決して購入した割には上品すぎて強烈さが無く、拍子抜けしたという話も多かった豆でもあります。
一方で価格がリーズナブルかつガツンとくる個性のマンデリンは幅広く親しまれ、その土のような力強くスパイシーな風味は今では少なくなった愛煙家の嗜好にぴったり合ったものと思われます。
スマトラ式と呼ばれる独特の乾燥方法により、青々とした色に仕上がった生豆は遠くから見てもそれと分かります。
今回のムンテ・ドライミル ドロサングールは優良なマンデリンの産地として有名な北スマトラ州リントン地区の産で、優れた農家の豆が集められ、精選されたものです。さらにインドネシアでも珍しいハウスによる乾燥をスマトラ式で行い気候にも対応、その後も工場に移動して徹底的な選別を経て輸出されます。手元に届いた生豆は、袋を開けて一目でハンドピック(手作業による欠点豆の除去)がほとんど不要であることが分かるほどの完成度です。
しかし焙煎となると従来のマンデリンの曲者ぶりは健在で、特に焙煎の後半の色の着き方が不規則で、シワの出方やツヤを丁寧に見ていかないと煎り止めのタイミングで騙されてしまいます。
焦らずに丁寧に煎り進めていくと
ちゃんと均等に色づいてくれます。
マンデリンらしさが最も出る焙煎度としては中深煎りと深煎りの中間、フレンチローストの手前ぐらいでしょうか。
途中のカメレオンのような色変化に惑わされなければ、煎り止めのタイミング自体はさほどシビアではないと感じます。